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2023年10月19日
「無形文化遺産保護と災害リスクマネジメントに関する調査研究」事業の最終ワークショップを奈良で開催しました(2023年9月27日~9月29日)
「無形文化遺産保護と災害リスクマネジメントに関する調査研究」事業(2020~2023年度)における最終ワークショップを、2020年に独立行政法人国立文化財機構に設置された文化財防災センターとの共催により、2023年9月27日から29日の日程で奈良にて開催しました。
本ワークショップは上記事業で実施した調査研究活動を総括する目的で実施しました。2021年度の卓上調査以来、事業ではインドネシア、日本、バヌアツ、バングラデシュ、フィジー、フィリピン、ベトナム、モンゴルの研究者や研究機関と連携して活動を行ってきました。共催機関である文化財防災センターもまた、日本における関連情報を提供するなど、本事業の一端を担ってきました。ワークショップにはこれらすべての協力者を招聘し、各国で実施した事例調査の成果を共有する機会としました。本事業に協力した研究者が一堂に会するのは今回が初めてで、無形文化遺産を保護し、防災に活用するためのコミュニティ中心の行動計画を考えるため、活発な議論や意見交換が行われました。バヌアツとフィジーの協力者は残念ながら対面参加できませんでしたが、バヌアツの事例調査の成果については、オンラインで報告が行われました。事業の連携研究者に加え、無形文化遺産や災害リスクマネジメントの専門家やユネスコの文化担当官も参加し、有益なコメントや提言を行いました。
ワークショップ初日には、連携研究者がアジア太平洋各地で実施した事例調査についての報告が行われました。文化財防災センターも、センター自身の調査研究活動を紹介しつつ、日本における無形文化遺産防災の最新の動向について報告しました。二日目の午前中は2つのグループに分かれ、災害時に無形文化遺産を保護し、防災に活用するためのプロセスや方策について、参加者たちの現地調査経験を参照しつつ議論しました。専門家による総括のあと、最終討論では、無形文化遺産と災害リスクマネジメント分野のさらなる協働、本事業で得られた知見を気候変動による危機への対応に適用するなど、今後の課題や可能性が焦点となりました。
最終日はエクスカーションを企画し、日本において無形文化遺産として保護されている選定保存技術について学ぶため、なら歴史芸術文化村(天理市)の文化財修復・展示棟や吉野手漉き和紙の一つである宇陀紙の工房(吉野町)を視察しました。また、日本最古の神社の一つとして知られる大神(おおみわ)神社(桜井市)や、良質のスギとヒノキの混交林が特徴的な吉野の伝統的森林管理の現場を訪問するなど、奈良の無形文化遺産と環境との関わりについても理解を深めました。
本ワークショップでの議論を踏まえ、連携研究者はそれぞれの調査報告を研究論文としてまとめることになっており、その成果は2023年度末に報告書として出版される予定です。
ワークショップ参加者
事例調査報告の様子
グループ討論の様子
紙漉き工程を観察する参加者