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2023年9月15日
国際会議「新型コロナ感染症と無形文化遺産のレジリエンス」を大阪で開催しました(2023年7月27日~29日)
「新型コロナ感染症の無形文化遺産への影響に関する調査研究 (2021~2023年度)」事業を総括する国際会議「新型コロナ感染症と無形文化遺産のレジリエンス(ICH Resilience and the COVID-19 Pandemic)」を、2023年7月27日から29日の日程で大阪にて開催しました。
本事業は、コロナ禍におけるアジア太平洋地域の無形文化遺産の全体的な傾向を把握するため、2021年度に実施した質問票調査から始まりました。2022年度には質問票調査で特定できた事例について、イラン、インド、インドネシア、韓国、キルギス、パプアニューギニア、バングラデシュ、フィジー、モンゴルの9か国の研究者や機関と協力し、各地で現地調査を実施しました。
本会議は、事業の総括として開催し、2022年度に実施した現地調査の成果を共有するとともに、コロナ禍における無形文化遺産の課題や可能性について議論しました。9か国の協力研究者および日本の専門家を招き、活発な意見交換を行いました。日本の専門家からはコロナ禍における日本の伝統芸能やその上演に欠かせない三味線や能装束についての報告がありました。
総合討論では各参加者の報告を踏まえ、デジタル技術の利用など、パンデミックに起因するプラスマイナス双方の変化について議論しました。デジタル技術については、無形文化遺産の保護を促進し、生きた文化遺産をオンラインで記録するための手段として注視される一方、著作権侵害や、オンライン上の資料を利用する際の言語や環境の壁といった情報格差の問題が指摘されました。また、将来のパンデミックに備えるためには、様々な行事や事業を通じて関係者間のネットワークや強固な協力関係を構築することで、無形文化遺産の存続を確保する予防的措置が重要であることが強調されました。
本会議は、事業に参加する研究者が一堂に会し、コロナ禍でみずからが実施した研究に基づいて、無形文化遺産保護について意見交換を行うとともに、今後の協力に向け研究者間の関係を強化する絶好の機会となりました。
最終日には、大阪の大槻能楽堂を見学し、日本の伝統芸能である「能」について理解を深めました。能の紹介映像を観賞した後、2016年に「人間国宝」に指定された能楽師大槻文蔵氏による施設見学ツアーに参加しました。
国際会議の参加者
参加者による討論の様子